1.3.1 同値関係

集合$ X$に対し関係(relation)$ \sim$が定義されているとは、$ X$の2元$ x,y$に対し$ x\sim y$であるか $ x\not\sim y$のいずれか一方のみが成立している場合をいいます。$ x\sim y$のとき$ x$$ y$は関係がある $ x\not\sim y$のとき$ x$$ y$は関係がないといいます。
つまり、$ X$の2元$ x,y$をとると必ず「関係がある」または「関係がない」のいずれかになる場合に関係が定義されているといいます。

定義 1.3.1
集合$ X$に定義されている関係$ \sim$が次の条件を満たすとき関係$ \sim$同値関係(equivalence relation)であるという。
(1)(反射律)$ X$の任意の元$ x$に対し$ x\sim x$
(2)(対称律)$ X$の元$ x,y$に対し$ x\sim y$のとき、$ y\sim x$
(3)(推移律)$ X$の元$ x,y,z$に対し $ x\sim y,y\sim z$のとき、$ x\sim z$

そして、$ X$の同値関係$ \sim$に対し、$ x\sim y$であるとき$ x$$ y$は同値(equivalent)であるという。

同値関係とは、等号$ =$の関係を一般化したものです。

1.3.2 (曜日)
集合$ X$として年月日からなる集合を考えます。$ X$の元$ x,y$に対し$ x,y$の曜日が等しいとき$ x\sim y$とし$ x,y$の曜日か異なるとき $ x\not\sim y$と定義すると、$ \sim$は同値関係になります。このことを確かめてみましょう。

$ x$を年月日とすると$ x$$ x$の曜日が等しいのは明らかですので$ x\sim x$です。また、$ x$$ y$の曜日が等しいとき$ y$$ x$の曜日が等しいのも明らかですので推移律も成り立ちます。$ x$$ y$の曜日が等しく、$ y$$ z$の曜日が等しい場合、$ x$$ z$の曜日は等しいですので推移律も成り立ちます。よって、日付に対し曜日関係は同値関係になります。

1.3.3
集合$ X$として整数全体からなる集合 $ \mathbb{Z}$をとり、自然数$ n$を固定します。 $ \mathbb{Z}$の元$ x,y$に対し$ x$$ y$をそれぞれ$ n$で割った余りが等しいとき$ x\sim y$とし、$ n$を法とする合同関係といいます。すると、$ \sim$は同値関係になります。

$\displaystyle x\sim y \Longleftrightarrow x\equiv y \pmod{n}$

1.3.4
同値関係とならない関係をみてみましょう。
整数$ n,m$に対し、$ n\leqq m$のとき$ n\sim m$と定義しましょう。すると、2つの整数は$ n\leqq m$$ n > m$のいずれかであるため、$ \sim$は関係となります。そして、反射律と推移律は成り立ちます。しかし、$ x\leqq y$のとき$ y\leqq x$とは限りませんので対称律は成り立ちません。したがって、関係$ \sim$は同値関係ではありません。

Takashi
平成24年5月27日