1.3.2 同値類

集合$ X$に同値関係$ \sim$が定義されているとします。このとき、同値関係$ \sim$により同値な元で$ X$を分類してみましょう。

定義 1.3.5
集合$ X$の元$ x$に対し$ x$と同値である$ X$の元全体からなる集合をxを代表元(representative)とする同値類(equivalent class)といい、$ [x]$または $ \overline{x}$と記載します。つまり、$ x$を代表元とする同値類は

$\displaystyle [x]=\overline x=\{y\in X  \vert x\sim y\} $

です。

1.3.6
1.3.2のように年月日からなる集合には曜日関係が定義されます。このとき、2012年1月1日は日曜日ですから、 $ [2012年1月1日]$は日曜日からなる集合となります。

1.3.7
1.3.3のように整数 $ \mathbb{Z}$には$ n$で割ったときの余りによって合同関係が定義されます。 例えば、$ n=5$とすると$ [1]$は5で割ったときに余りが1となる整数からなる集合となります。 この合同関係による同値類を合同類といいます。

$ x$を代表元とする同値類$ [x]$の元$ y$を1つ固定します。このとき、$ [x]$の定義より$ [x]$の元は$ x$と同値な$ z$つまり$ x\sim z$となる$ z$です。一方、$ [y]$の元は$ y$と同値な$ w$つまり$ y\sim w$となる$ w$です。$ \sim$は同値関係であり推移律が成り立ちますので、$ z\sim w$がいえます。つまり、$ [x]=[y]$です。これは同値類$ [x]$は代表元$ x$の取り方に依存しないことを意味しています。

命題 1.3.8
集合$ X$に同値関係$ \sim$が定義されているとき、 $ X$の元$ x,y$に対し
(1) $ x\sim y\qquad \Longleftrightarrow\qquad y \in [x]\qquad\Longleftrightarrow\qquad [x]=[y]$
(2) $ x \not\sim y\qquad\Longleftrightarrow\qquad y\not\in[x] \qquad\Longleftrightarrow\qquad [x]\cap[y]=\emptyset$

この命題より$ X$の同値類$ [x],[y]$は一致するか交わりを持たないかいずれかであることがわかります。ここで、$ X$から元$ x$をとり、$ X-[x]$から元$ y$をとり、$ X-[x]-[y]$から元$ z$をとると、 $ [x],[y],[z]$は交わりを持たない$ X$の部分集合であることがわかります。このように $ x,y,z,\cdots$をうまくとることにより$ X$を完全に分類しようというのがつぎの命題です。

命題 1.3.9
集合$ X$に同値関係$ \sim$が定義されているとき、$ X$の部分集合$ R$をうまくとることにより、Rの異なる元 $ r_1\neq r_2$に関して $ [r_1]\cap[r_2]=\emptyset$とでき、かつ

$\displaystyle X=\cup_{r\in R}[r] $

とできる。

つまり、集合$ X$は、互いに交わらない同値類$ [r]$の和集合で表すことができます。このように、互いに交わらない部分集合の和のことを直和(direct sum,disjoint union)といいます。また、このような$ R$のことを完全代表系(complete system of representetives)といいます。

1.3.10 (曜日関係による同値類)
1.3.2のように、年月日からなる集合$ X$に曜日による同値関係が定義されます。このとき年月日$ x$代表元とする同値類$ [x]$$ x$と同じ曜日の年月日からなる$ X$の部分集合になります。
例えば、2012年1月1日は日曜日ですので $ [2012年1月1日]$は日曜日の年月日からなる$ X$部分集合になります。この例でも、$ [x]$は代表元$ x$の取り方に依らないことが分かります。
同様に $ [2012年1月2日]$は月曜日からなる部分集合、 $ [2012年1月3日]$は火曜日からなる部分集合・・・となり、 $ X$ $ [2012年1月1日]\cup[2012年1月2日]\cup\cdots\cup[2012年1月7日]$と分類できることが分かります。つまり、 $ \{ 2012年1月1日,2012年1月2日,\cdots2012年1月7日 \}$が完全代表系であることが分かります。(ここで、完全代表系を $ 2012年1月1日$と取ったのは全く意味がありません。)
また、日曜日の集合を$ A_1$とすると、 $ A_1=[2012年1月1日]$、 月曜日の集合を$ A_2$とすると $ A_2=[2012年1月2日]$、・・・、 土曜日の集合を$ A_7$とすると $ A_7=[2012年1月7日]$となりますので、 $ X=A_1\cup\cdots\cup A_7$と分かります。これは年月日からなる集合$ X$を曜日で分類していることになります。

1.3.11 ($ \pmod {n}$)
1.3.3のように、自然数$ n$を固定すると整数 $ \mathbb{Z}$には$ n$を法とする合同関係が定義され同値関係となります。このとき整数$ x$を代表元とする同値類$ [x]$$ n$で割ったときの余りが$ x$$ n$で割った余りと等しい整数からなる集合となります。
例えば、$ n=5$とすると$ [3]$は5で割ったときの余りが3になる整数全体からなります。同じく$ [13]$も5で割ったときの余りが3になる整数全体からなります。つまり、この例からも同値類は代表元の取り方に依らないことがわかります。
また、整数を5で割った余りは0から4までの整数となりますので、整数 $ \mathbb{Z}$ $ [0]\cup[1]\cup[2]\cup[3]\cup[4]$となります。したがって、 $ \{0,1,2,3,4\}$が完全代表系となります。

これらの例から分かるとおり、完全代表系$ R$の選び方は一意的ではありません。

Takashi
平成24年5月27日