1.3.3 商集合

集合$ X$に同値関係$ \sim$が定義されているとき、前講より集合$ X$は完全代表系の元による同値類$ [r]$直和で表されることがわかります。

定義 1.3.12
集合$ X$に同値関係$ \sim$が定義されているとき、同値類全体からなる集合を同値関係$ \sim$による商集合(quotient set)といい、 $ X\big/\hspace{-1mm}\sim$と記載します。つまり、

$\displaystyle X\big/\hspace{-1mm}\sim  =\{  [x] \vert  x\in X  \} $

ここで、商集合は同値類からなる集合であるため、元の集合$ X$とは階層が異なることに注意しましょう。商集合 $ X\big/\hspace{-1mm}\sim$$ X$の元を同値関係$ \sim$で分類した分類を要素とする集合です。このことを例を使ってみていきましょう。

1.3.13
1.3.10のように、年月日からなる集合$ X$に曜日による同値関係$ \sim$が定義されます。このとき、日曜日の集合を$ A_1$月曜日の集合を$ A_2$・・・、 土曜日の集合を$ A_7$とすると、 $ A_1,\cdots,A_7$が全ての同値類ですので商集合 $ X\big/\hspace{-1mm}\sim$ $ X\big/\hspace{-1mm}\sim=\{ A_1,A_2,\cdots,A_7 \}$となります。

1.3.14 ($ \pmod {n}$)
のように,自然数$ n$を固定すると整数 $ \mathbb{Z}$には同値関係$ \pmod n$が定義されます。任意の整数は自然数$ n$で割ると余りは0以上$ n-1$以下の整数になります。したがって, $ \mathbb{Z}\big/\hspace{-1mm}\sim$は、 $ \{[0],[1],\cdot,[n-1]\}$であることが分かります。

つまり、商集合とは同値類[a]を抽象化したものと考えられます。たとえば「2012年1月1日と同じ曜日の集合」を考えるよりも端的に「月曜日」を考えた方が効率的です。

Takashi
平成24年5月27日