「初等整数論(入門編)」では、初等整数論のうち平方剰余の相互法則をまでを扱います。
素数を法とする合同式のうち1次式
は(の場合を除き)は必ず解があります(定理2.4.18)。また、2つの素数に対する連立方程式
2次方程式ではどうでしょうか。2次合同式 は常に解を持つとは限りません。を固定しを動かすと(の場合を除くと)2分の1で解を持つことになります。これは、における原始根の存在、つまり が巡回群であることより簡単に導けることです。
具体的にとしてで考えます。
すると、
それでは、 のを固定してを動かしたらどうなるでしょうか。
具体的にとしを素数で動かしてみましょう(の場合 という自明な方程式になってしまうため省略します。)
この例では の解の有無と の解の有無が一致していましたが、常に一致するわけではありません。
で確かめてみましょう。
うえの表から、 の解の有無と の解の有無が必ず一致するわけではないことが分かります。では、どのような場合に一致してどのような場合に一致しないのか、これを完全に決定するのが平方剰余の相互法則です。上の表から、 のとき、 と の解の有無は一致し、 のとき、 と の解の有無は異なります。
これを一般的にすると、2つの奇素数の両方がでのとき、2つの合同式 , の解の有無は異なり、それ以外の場合(つまり、のうちどちらか一方が、で割ってを余る場合、または両方がで割って余る場合)は、2つの合同式 , の解の有無は一致します。
これが、平方剰余の相互法則の内容です。平方剰余の相互法則は、第一補充法則、第二補充法則と併せることにより2次合同式の解の有無を完全に決定することができます。
それでは3次式でも同様のことが成り立つのでしょうか。つまり、方程式
の解の有無と方程式
の解の有無に何らかの関連はあるのでしょうか。これらの法定式の解の有無の単純な法則はありません。しかし、この方程式を
上で考えることで平方剰余の相互法則と同様の美しい法則が成り立ちます。
4次式でも
上で考えることにより平方剰余の相互法則と同様の美し法則が成立します。
これを一般化したのが類体論です。平方剰余の相互法則を単純化すると の解の有無がで決定されるというものですが、これを一般化するとある特別な合同式 の解の有無が、方程式で決まるが存在してで決まる。とうのが類体論をかみ砕いたものです。
本HPの目標は類体論の理解ですが、本章ではその前提として、円分方程式や平方剰余の相互法則を学びます。