2.2.1 多項式

本HPでは、特に断りがない場合、"多項式"とは、1変数多項式(univariate polynomial), polynomial in one variable)を指します。「1変数多項式」とは変数( $ \mathrm{X}$ $ \mathrm{Y}$など)が1種類である多項式のことです。

多項式の係数は、整数であったり有理数であったり実数であったり様々です。 このうち、有理数を係数とする多項式を有理係数多項式(polynomial in one variable with rational coefficient)といい、有理係数多項式全体の集合を $ \mathbb{Q}[X]$と記載します。 $ \mathbb{Q}$は有理数体のこと、 $ [\mathrm{X}]$は変数を $ \mathrm{X}$とする多項式であることを意味しています(丸括弧$ (  )$でなく四角括弧$ [  ]$であることに注意してください。丸括弧$ (  )$には別の意味があります。) $ {\mathrm{X}^2+2\mathrm{X}+1}$とか、 $ {3\mathrm{X}^5-1}$などです。 $ \mathrm{Y}$を変数とする多項式であれば $ \mathbb{Q}[\mathrm{Y}]$と記載します。小文字ではなく大文字で $ \mathrm{X}$を記載するのも理由があります。これについては、後に述べます。

また、係数を整数とする多項式を、整数係数多項式といい $ \mathbb{Z}[\mathrm{X}]$と書きます。 $ \mathbb{Z}$は整数環を意味し、 $ [\mathrm{X}]$ $ \mathrm{X}$を変数等する多項式であることを意味しています。 $ \mathrm{X}^{100}$は有理係数多項式でもあり整数係数多項式でもあります。しかし、 $ \sqrt{2}\mathrm{X}^2$は有理係数多項式ではありません。

同様に、実数係数多項式を $ \mathbb{R}[\mathrm{X}]$と複素係数多項式を $ \mathbb{C}[\mathrm{X}]$と記載します。

なお、多項式には0次多項式(=定数)も含まれていることに注意してください。例えば、$ 1$ $ {\textstyle \frac{1}{2}}$は、有理数ですが0次多項式として有理係数多項式にもふくまれます。
$ \mathrm{K}$ $ \mathbb{Z},\mathbb{Q},\mathbb{R},\mathbb{C}$とすると $ \mathrm{K}\subset \mathrm{K}[\mathrm{X}]$です。

最大次数の係数が1の多項式をモニック多項式あるいはモニック(monic)であるといいます。

2.2.1
$ \mathrm{X}^2+\mathrm{X}+1$は、モニックです。
$ 2\mathrm{X}^2+\mathrm{X}+1$はモニックではありませんが、 $ {\textstyle \frac{1}{2}}$倍した、 $ {\textstyle \mathrm{X}^2+\frac{1}{2}\mathrm{X}+1}$はモニックです。

$ \mathrm{K}$ $ \mathbb{Q},\mathbb{R},\mathbb{C}$とすると、任意の $ f(\ne0)\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$に対し、$ f$の最高次の係数を $ a_n\in \mathrm{K}$とすると、 $ \frac{1}{a_n}f$はモニックとなります。
これに対し、 $ \mathrm{K}=\mathbb{Z}$のときはモニックにすることができません。 $ \frac{1}{a_n}\in \mathbb{Z}$とは限らないからです。

多項式 $ f(\mathrm{X})$次数(degree)$ \deg(f)$で表します。ただし、$ f=0$のときは便宜的に $ \deg(0)=-\infty$と定義します。定義より、 $ \deg(fg)=\deg(f)+\deg(g)$です。 $ \deg(f)\leqq0$の多項式、つまり定数項(constant term)のみからなる多項式を本HPでは定数多項式といいます。この用語は必ずしも一般的ではありません。定数多項式は $ \mathrm{K}$の元と同一視することができます。

Takashi
平成24年5月27日