3.2.4 ガウス整数

$ i$を虚数単位(つまり、$ i^2=-1$となる数のうちの一方)としたとき、整数$ n,m$に対し$ n+mi$ガウス整数(Gaussian integer)といます。ガウス整数全体からなる集合を $ \mathbb{Z}[i]$と記載します。つまり、

$\displaystyle \mathbb{Z}[i]=\{n+mi\vert n,m\in Z\} $

命題 3.2.16
$ \mathbb{Z}[i]$は、環となる。 $ \mathbb{Z}[i]$ガウス整数環という。

ガウス整数はの最も簡単な例です。

ガウス整数 $ \mathbb{Z}[i]$から0以上の整数 $ \mathbb{Z}_{+}$への関数$ N$

$\displaystyle \begin{array}{rccc}
N : & \mathbb{Z}[i] & \longrightarrow & \mat...
... & \rotatebox{90}{$\in$}\\ [-4pt]
& n+mi & \longmapsto & n^2+m^2
\end{array} $

で定義すると、$ N$は複素平面における原点$ (0,0)$とガウス整数$ (n,m)$との距離を意味しています。このことから、2つのガウス整数を $ z_1=n_1+m_1i,z_2=n_2+m_2i$とおくと、 $ N(z_1z_2)=N(z_1)N(z_2)$となることが分かります。$ N$をガウス整数のノルム(norm)といいます。ノルムは代数的数に対し定義される、整数論において重要な関すです。ここでは、ノルムを使ってガウス整数の可逆元を調べてみましょう。

命題 3.2.17
ガウス整数の可逆元は $ \pm 1, \pm i$のみであり、つまり $ (\mathbb{Z}[i])^{\times}=\{\pm1,\pm i\}$であり、 $ (\mathbb{Z}[i])^{\times}\cong\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$である。

証明
ガウス整数$ z_1$が可逆元であるとすると、$ z_1z_2=1$となるガウス整数$ z_2$が存在する。両辺のノルムをとると $ N(z_1z_2)=N(z_1)N(z_2)=1$となりますが、 $ N(z_1),N(z_2)$は0以上の整数であることより、 $ N(z_1)=\pm1$と分かる。つまり、 $ z_1=n_1+m_1i$とすると、 $ n_1^2+m_1^2=1$であるが、 $ n_1,m_1\in \mathbb{Z}$より、 $ (n_1,m_1)=(\pm1,0),(0,\pm)$と分かる。よって、 $ (\mathbb{Z}[i])^{\times}=\{\pm1,\pm i\}$である。
また、$ i^2=-1$,$ i^3=-i$,$ i^4=1$であることより、 $ (\mathbb{Z}[i])^{\times}$$ i$を生成元とする位数4の巡回群であることが分かり、したがって、 $ (\mathbb{Z}[i])^{\times}\cong\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$である。

Takashi
平成24年5月27日