3.2.3 環の準同型

2つの群の間の準同型写像が定義され、また、2つの群の間の同型が定義されたように環の準同型・同型が定義できます。

定義 3.2.13
$ R,H$を2つの環とする。$ R$から$ H$への写像 $ f:R\longrightarrow H$が任意の $ r_1,r_2\in R$に対し次の条件を満たすとき、$ f$準同型写像(homomorphism)であるという。
(1) $ f(r_1+r_2)=f(r_1)+f(r_2)$
(2) $ f(r_1r_2)=f(r_1)f(r_2)$
(3) $ f(1_R)=1_H$

条件(1)(2)は、環の演算($ +,\cdot$)が写像$ f$によって保たれていることを意味します。また、環の元は乗法に関する逆元が存在するとは限らないため条件(3)が必要となります。

群と同様、準同型定理が成り立ちます。

命題 3.2.14
$ f$を環$ R$から環$ H$への準同型写像とする。このとき、
(1) $ \mathrm{Ker}f$$ R$のイデアルとなる。
(2) $ \mathrm{Im}f$$ H$の演算により環となる。

定理 3.2.15 (準同型定理)
$ f$を環$ R$から環$ H$への準同型写像とする。準同型写像 $ \pi:R\longrightarrow E/\mathrm{Ker}f$及び $ \overline{f}:\overline{f}:R/\mathrm{Ker}f\longrightarrow H$に対し $ f=\overline{f}\circ\pi$が成り立つ。つまり、次が可換図式となる。

$\displaystyle \xymatrix{
R \ar@{->}[r]^{f}\ar@{->}[d]_{\pi}\ar@{}[dr]_(0.3)\circlearrowleft & H \\
R/\mathrm{Ker}f \ar@{->}[ru]_{\overline{f}} & \\
}
$

また $ \overline{f}$ $ R/\mathrm{Ker}f$から $ \mathrm{Im}H$への写像と考えると同型写像となる。

$\displaystyle \overline{f}:R/\mathrm{Ker}f\cong\mathrm{Im}H$

Takashi
平成24年5月27日