2.2.3 多項式の除法の原理

整数におけるユークリッドの互除法でポイントとなった性質は除法の原理(商と余りの関係)です。これが、多項式の世界でも成り立つことを確かめましょう。

定理 2.2.11 (多項式の除法の原理)
$ \mathrm{K}$ $ \mathbb{Q},\mathbb{R},\mathbb{C}$とする $ f(\mathrm{X}),g(\mathrm{X})\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$0でない $ \mathrm{K}$係数多項式とするこのとき、 $ \mathrm{K}$係数多項式 $ q(\mathrm{X}),r(\mathrm{X})\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$が存在して、

$\displaystyle f(\mathrm{X})=q(\mathrm{X})g(\mathrm{X})+r(\mathrm{X}),   \deg (g)>\deg (r)$

とできる。

ポイントは、 $ \deg (g)>\deg (r)$とできるところです。整数でも同じ不等式が成り立っていましたね。

証明は、$ f$$ g$で割った商を$ q$、余りを$ r$とすることにより可能ですが、ここでは省略します。

2.2.12
$ f(\mathrm{X})=\mathrm{X}^2+\mathrm{X}+1,g(\mathrm{X})=\mathrm{X}+1$とする。
$ f$$ g$で割った商は $ \mathrm{X}$、余りは$ 1$である。 したがって、
$ \mathrm{X}^2+\mathrm{X}+1=\mathrm{X}(\mathrm{X}+1)+1$

Remark 2.2.13
除法の原理が成り立つ整域をユークリッド整域[*]といいます。ユークリッド整域では、素因数分解の一意性が成立します。

Takashi
平成24年5月27日