3.1.1 演算

ここから演算が定義されている集合を考えます。例えば、有理数全体からなる集合 $ \mathbb{Q}$や実数全体からなる集合 $ \mathbb{R}$、複素数全体からなる集合 $ \mathbb{C}$は、集合であるとともに、集合の中に加法・乗法という演算 $ (+,\times)$が定義されています。 ここで、演算$ *$が定義されているとは集合の2つの元$ a,b$に対し$ a*b$が一意に定まり再び同じ集合に含まれていることを意味します。ポイントは、@全ての集合の元に対し演算が可能であること、A演算の結果が再び同じ集合に含まれていることです。特に、Aが満たされているときその集合は演算$ *$に関し閉じているといます。

Remark 3.1.1
集合 $ \mathrm{K}$に演算$ *$が定義できるとは、 $ \mathrm{K}\times\mathrm{K}$から $ \mathrm{K}$への写像

\begin{displaymath}
\begin{array}{rccc}
*:& \mathrm{K}\times\mathrm{K}& \longrig...
...in$}  [-4pt]
& (r_1,r_2) & \longmapsto & r_1*r_2
\end{array}\end{displaymath}

が定義されることと同値です。ここで、 $ \mathrm{K}\times\mathrm{K}$とは、 $ \mathrm{K}$ $ \mathrm{K}$直積集合を意味しています。

例えば、整数全体 $ \mathbb{Z}$は、加法($ +$)に関し上の@Aの条件を満たしていますので加法($ +$)に関し閉じています。同様に乗法($ \times$)に関しても閉じていることが分かります。

これに対し、有理数 $ \mathbb{Q}$に除法($ \div$)を考えると、$ 1\div 0$は定義できませんので@を満たしません。したがって、有理数 $ \mathbb{Q}$は除法($ \div$)が定義できません。これに対し、有理数から0を除いた集合 $ \mathbb{Q}^{\times}=\mathbb{Q}-\{0\}$を考えると、@全ての $ \mathbb{Q}^{\times}$の元に対し$ \div$を行うことは可能であり、Aその結果再び $ \mathbb{Q}^{\times}$の元となりますので、集合 $ \mathbb{Q}^{\times}$に関しては除法($ \div$)は閉じています。 同様に、整数 $ \mathbb{Z}$に対しとは整数にはなるとは限りませんので除法($ \div$)に関して定義されていません。

Takashi
平成24年5月27日