2.4.2 合同類

定理 2.4.10
自然数$ n$を固定するとき、2つの整数の間に定義される $ \equiv \pmod n$の関係は、同値関係となる。この関係のことをnを法とする合同関係(congrence relation)といいます。

証明
任意の整数$ a$に対し $ a\equiv a\pmod n$である。(反射律)
また、 $ a\equiv b \pmod n$のとき $ b\equiv a\pmod n$である。(対称律)
$ a\equiv b\pmod n, b\equiv c\pmod n$のとき$ a\equiv c$である。(推移律)
よって、$ n$を法とする合同関係は同値関係となる。

整数に対し$ n$を法とする合同関係は同値関係となるため、整数を合同関係によって同値類に分類することができます。この同値類のことをnを法とする合同類(congruence class)といいます。剰余類(residue class)ともいいますが、剰余類はもう少し広い概念としても使いますので、ここでは合同類という用語を使います。このように合同類と合同類との用語を分けると、合同類は合同類の1種であることがわかります。(3.1.29参照)

$ n$を法とする合同類は、整数を$ n$を法とする合同関係で分類するものです。すなわち、整数を$ n$で割った余りが等しいものどおで分類することになります。 $ n$で割ったときの余りが$ a$と等しくなる整数からなる集合を $ \overline{a}$とします。

$\displaystyle \overline{a}=\{ b\in \mathbb{Z} \vert b\equiv a \pmod n \} $

すると、 $ \overline{a}$$ n$を法とする合同類となり、このときの$ a$代表元といいます。 整数を$ n$で割った余りは必ず $ 0,1,2,\cdots,n-1$と等しくなりますから、整数 $ \mathbb{Z}$ $ \overline{0},\overline{1},\overline{2},\cdots,\overline{n-1}$の和集合と等しくなります。 $ a\equiv b\pmod{n}$のとき、 $ \overline{a}=\overline{b}$ですので、合同類1つに対しその代表元は無限にあります。

$\displaystyle \mathbb{Z}=\overline{0}\cup\overline{1}\cup\cdots\cup\overline{n-1}$

です。また、この $ \overline{i}\cap\overline{j},(0\geqq i\neq j\geqq n-1)$です。このように、互いに交わりのない集合、つまり直和(direct union)です。

2.4.11
$ \mod 2$で考える。 $ overline{0}$は2で割って余りが0となる整数つまり偶数からなり、 $ \overline{1}$は2で割って余りが1となす集合、つまり奇数からなる集合となる。

2.4.12
$ \mod{5}$で考える。すると、 $ \overline{1}$は、5で割ったとき余りが1となる整数ですので $ \overline{1}=\{\cdots,-4,1,6,11,16,\cdots\}$です。同様に、 $ \overline{2}=\{\cdots,-3,2,7,12,17\cdots\}\cdot\cdot$です。 整数は $ \overline{0},\overline{1},\overline{2},\overline{3},\overline{4}$の5つの合同類に分けられます。一方、 $ \overline{0}=\overline{5}$ですので、合同類 $ overline{0}$の代表元は0でもあり5でもあります。

$\displaystyle \mathbb{Z}=\overline{0}\cup\overline{1}\cup\overline{2}\cup\overline{3}\cup\overline{4}\cup\overline{5}$

であり、この和は直和です。

$ n$を法とする合同類からなる集合、つまり整数 $ \mathbb{Z}$$ n$を法とする合同関係による商集合 $ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$と記載します。 $ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ $ \overline{a}$を要素とする集合です。

Takashi
平成24年5月27日