2.2.7 因数分解の一意性

因数分解の一意性を示します。これは、素因数分解の一意性と同じ証明です。 ポイントとなる定理は次の定理です。

定理 2.2.19
既約多項式 $ p(\mathrm{X})$が多項式 $ f(\mathrm{X})g(\mathrm{X})$を割り切るとき、 $ p(\mathrm{X})$は、 $ f(\mathrm{X})$または $ g(\mathrm{X})$を割り切る。

証明

仮に $ p(\mathrm{X})\nmid f(\mathrm{X})$とすると $ p(\mathrm{X})$は既約多項式であるため $ p(\mathrm{X})$ $ f(\mathrm{X})$と互いにとなる。同様に $ p(\mathrm{X})\nmid g(\mathrm{X})$とすると、 $ p(\mathrm{X})$ $ f(\mathrm{X})$と互いにそとなる。したがって、定理2.2.16より、 $ a_1(\mathrm{X})p(\mathrm{X})+b_1(\mathrm{X})f(\mathrm{X})=1,a_2(\mathrm{X})p(\mathrm{X})+b_2(\mathrm{X})g(\mathrm{X})=1$となる、 $ a_1(\mathrm{X}),a_2(\mathrm{X}),b_1(\mathrm{X}),b_2(\mathrm{X})\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$が存在する。
そして、この2つの式をかけ合わせると、 $ A_1(\mathrm{X})p(\mathrm{X})+B(\mathrm{X})f(\mathrm{X})g(\mathrm{X})=1$となる多項式 $ A_1(\mathrm{X}),B_1(\mathrm{X})\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$が存在することが分かる。これにより、再び定理2.2.16より、 $ p(\mathrm{X}),f(\mathrm{X})g(\mathrm{X})$は互いに素であることが分かるが、これは、 $ p(\mathrm{X})$が多項式 $ f(\mathrm{X})g(\mathrm{X})$を割り切るという仮定に矛盾する。したがって、 $ p(\mathrm{X})$は、 $ f(\mathrm{X})$または $ g(\mathrm{X})$を割り切ることが分かかる。

最後に、因数分解の一意性を証明します。

例えば、 $ \mathrm{X}^2+2\mathrm{X}+1=(\mathrm{X}+1)^2=(-\mathrm{X}-1)^2$ですので因数分解の一意性が成り立ちませんので、既約式をモニックに限定する必要があります。整数でも $ 4=2^2=(-2)^2$に対応します。

定理 2.2.20
$ \mathrm{K}=\mathbb{Q},\mathbb{R},\mathbb{C}$とする。
このとき、 $ \mathrm{K}$係数多項式 $ f(\mathrm{X})\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$に対し、モニックな既約多項式 $ P_i^{n_i}(\mathrm{X})\in \mathrm{K}[\mathrm{X}]$が存在して

$\displaystyle f(\mathrm{X})=aP_1^{r_1}(\mathrm{X})P_2^{r_2}(\mathrm{X})\cdots P_n^{r_n}(\mathrm{X}) $


と分解でき、この分解は一意的である。

Takashi
平成24年5月27日