定理2.3.10より、1の原始
乗根は
個あることが分かります。1の原始
乗根全てを解とする多項式を円分多項式(cyclotomic polynomial)といい、
で表します。つまり、1の原始
乗根を、
とすると、円分多項式
は、
 |
(2.12) |
です。
円分多項式の具体例を見ていきましょう。
例 2.3.14

の因数分解は
表2.3にありますので、これより、円分多項式を取り出すと次のようになります。
表 2.5:
円分多項式
 |
この例から分かるとおり、円分多項式は整数係数多項式になります。また、
上既約多項式です。証明は、後に行いますがここでは事実のみ定理の形で述べておきます。
定理 2.3.15
円分多項式を

は既約な

次整数係数多項式である。
円分多項式を具体的に求めるのに必要な性質は以下の定理です。円分多項式の性質として通常メビウスの反転公式が掲げられていますが、メビウスの反転公式を用いて円分多項式を求めることはできません。具体的に円分多項式を求める際は下記の性質が重要です。
命題 2.3.16 (円分多項式の性質)
(1)
(2)

は

個に因数分解でき、その最高次数は
(3)

を素数とするとき、
(4)

を素数とするとき、
(5)

を自然数で奇数

を自然数とするとき、
(6)

を

と互いに素な素数とするとき、
(7)

を自然数で

を1の原始3乗根とするとき、
証明
(1)

を

の解とすると

である。

の
指数を

とすると、
定理2.3.7より

である。このとき

は

なる

に対し

の解となっている。よって、左辺=0の解が右辺=0の解になっていることが分かった。
逆に、

なる

に対し

の解を

とすると

であり、

は

の解である。
(2)

の約数の個数は

個であるため(1)より明らか。
(3)

であり、

であるため(2)より明らか。
(4)

より示せる。
上の命題を使って、少し大きな
についての円分多項式の具体例を見ていきましょう。
Takashi
平成24年5月27日