定義 3.1.45
準同型
に対し、
の単位元
の逆像
を
核(kernel)といい記号
で表す。つまり、
次の命題によりカーネル(日本語でも核よりカーネルと呼ぶ方が多いです)はの部分群になります。カーネルは大変重要な部分群です。
また、準同型の像は
と表します。具体的には
です。
次の命題より
はの部分群であり、
はの部分群となります。後にみるように
は正規部分群になります。なお、
はの部分群ですが必ずしも正規部分群であるとはかぎりません。
命題 3.1.46
2つの群
の間の準同型
に対し
(1)
は
の
正規部分群である。
(2)
は
の部分群である。
(3)
証明
(1)
に対し
より
である。よって、
は部分群であることが分かった。
正規部分群であることは、任意の
と任意の
に対し、
であり
となることから分かる。
(2)
に対し、
の定義よりある
が存在して
となる。したがって、
であるため、
である。よって、
は
の部分群となる。
(3)
とする。
とすると、
であるため、
である。したがって、
であり
となる。これは
が単射であることを意味している。
逆に
が単射であると仮定すると
は空集合又は1元からなる集合となるが、
であるため、
である。
例 3.1.47
自然数
を固定し、
から
への
倍写像
を考えます。
すると、
は加群
から加群
への準同型写像となります。実際、
とすると
です。
ですのでは単射です。
群の正規部分群をとします。すると、定理3.1.35よりは群の演算から自然に導入される演算により群となります。また、群の元に対し剰余類を対応させることにより、からへの写像が定義されます。この写像をからへの自然な写像ということがあります。は準同型写像となります。
命題 3.1.48
を群、
をその正規部分群とすると
から
への自然な写像
は次の性質を満たす。
(1)
は準同型写像
(2)
は全射
(3)
つまり、自然な写像
は
とする全射準同型写像です。
を2つの群としをからへの準同型写像とすると、
はの正規部分群です。したがって、から
への自然な全射準同型写像が定義されます。
一方、準同型写像
は、剰余群
からへの写像
を次のように定義できます。
がwell-definedであること、つまり、剰余類の代表元の取り方に依らないことは次のように分かります。
とすると、
です。すると、
(
)。よって、剰余類の代表元の取り方に依らずにが定義されます。
次の定理は、準同型写像
から定義される準同型写像
,
が整合的であること、更に、
が
と同型であることを示す、大変重要な定理です。
定理 3.1.49 (準同型定理)
2つの群
の間の準同型写像を
とすると、準同型写像
及び
に対し
が成り立つ。つまり、次が可換図式となる。
また
を
から
への写像と考えると同型写像となる。
例 3.1.50
自然数
を固定し、整数
から複素数
への写像
を
で定義します。すると、任意の整数
に対し
です。これにより、
は、加群
から
への準同型写像になります。
です。また、
はの乗根全体
となります。
これにより、
が分かります。
Takashi
平成24年5月27日