3.1.8 準同型と同型

この講では、2つの群$ G$$ H$の間の準同型写像と同型を学びます。写像についての基礎知識は、1.2.2参照。

定義 3.1.36 (準同型)
$ G$から群$ H$への写像 $ f:G\longrightarrow H$が任意の $ g_1,g_2\in G$に対し次の条件を満たすとき、$ f$準同型写像(homomorhism)であるといいます。

$\displaystyle f(g_1g_2)=f(g_1)f(g_2) $

$ f(g_1g_2)=f(g_1)f(g_2)$は、群$ G$の演算を$ f$により演算が保たれてたまま$ H$に写されることを意味します。

命題 3.1.37
$ f$を群$ G$から群$ H$への準同型とすると$ f$$ G$の単位元$ e_{G}$$ H$の単位元$ e_{H}$に写す。つまり、 $ f(e_{G})=e_{H}$

証明
$ f(e_{G})=f(e_{G}e_{G})=f(e_{G})^2$ですので、 $ f(e_{G})^{-1}$を右から(または左から)かけると $ e_H=f(e_{G})$です。

命題 3.1.38
$ f:G\longrightarrow H,g:H\longrightarrow I$を、群$ G,H,I$間の準同型であるとすると、合成写像 $ g\circ f:G\longrightarrow I$も準同型となる。

証明
任意の $ g_1,g_2\in G$に対し $ g\circ f(g_1g_2)=g(f(g_1g_2))=g(f(g_1)f(g_2))=g(f(g_1))g(f(g_2))=g\circ f(g_1)g\circ f(g_2)$より、$ g\circ f$は準同型である。

定義 3.1.39
$ G$から$ H$への準同型写像$ f$が全単写である場合、$ f$同型写像(isomorphism)という。このとき群$ H$と群$ G$同型(isomorphic)であるといい、$ H\cong G$と記載する。群として同型であることを明確にするために、群同型ともいうことがある。また、同型写像$ f$を明示するために、 $ G\underset{f}{\cong} H$と記載することがあります。

3.1.40
$ G$に対し恒等写像 $ \mathrm{id}_G:G\longrightarrow G$は、$ G$から$ G$への同型写像である。

命題 3.1.41
同型写像の逆写像は同型写像である。

証明
$ f$$ G$から$ H$への同型写像とすると $ h_1,h_2\in H$に対し $ f^{-1}(h_1)=g_1,f^{-1}(h_2)=g_2$とおく。 $ f(g_1g_2)=f(g_1)f(g_2)=h_1h_2$であるため、 $ f^{-1}(h_1h_2)=g_1g_2=f^{-1}(h_1)f^{-1}(h_2)$である。よって、$ f^{-1}$が準同型であることが示せた。$ f$は全単射であるため、$ f^{-1}$も全単射である。よって、$ f^{-1}$は同型写像である。

定理 3.1.42
同型は群の間の同値関係となる。

証明
恒等写像は$ G$から$ G$への同型写像であるため、$ G\cong G$(対称律)
同型写像の逆写像も同型写像であるため、$ G\cong H$であるとき$ H\cong G$である。(反射律)
同型写像と同型写像の合成は同型写像であるため、 $ G\cong H,H\cong K$のとき$ G\cong K$(推移律)

3.1.43
位数$ n$の巡回群 $ \textless g\textgreater $ $ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$は、

$\displaystyle \begin{array}{rccc}
f:& \textless g\textgreater& \longrightarrow...
...in$} & & \rotatebox{90}{$\in$}  [-4pt]
& g^m & \longmapsto & m
\end{array} $

により同型になります。(確かめてみましょう。)

位数$ n$の任意の巡回群は $ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$と同型となりますので、位数$ n$の巡回群は全て同型になります。

Remark 3.1.44
準同型 $ f:G\longrightarrow H$が単写であるとき、$ G$$ H$埋め込まれているといい、$ f$埋め込み写像(emmbeding mapping)ということがあります。これは、$ f$が単写であることから、$ G$$ f(G)$が同型となりますが、$ f(G)$$ H$の部分群となることから、あたかも$ G$$ H$の部分群と同視できることに由来します。

Takashi
平成24年5月27日