2.5.2 平方剰余の相互法則

いよいよ初等整数論の華である、平方剰余の相互法則にはいります。まずは、証明なしに平方剰余の相互法則を見ていきましょう。

定理 2.5.6 (平方剰余の相互法則)
$ p,q$を2つの奇素数とすると、

$\displaystyle {q\overwithdelims () p}{p\overwithdelims () q}= (-1)^{\frac{p-1}{2}\frac{q-1}{2}} $

が成り立つ。

平方剰余の相互法則を最初に完全な証明を与えたのはガウスです。ガウスは平方剰余の相互法則に対し生涯で7つの本質的に異なる証明を与えています。ガウスが最初に証明したのは、1796年4月8日(ガウス日誌)ですのでガウスがまだ19歳のときです。ガウスはこの法則を基本定理とよんでいます。

ここでは、平方剰余の相互法則の意味を考えてみます。平方剰余の相互法則は、どんなに考えても不思議な法則です。

$ {q\overwithdelims () p}$$ \mod{p}$において$ q$が平方剰余か否かを問題にしており、 $ {p\overwithdelims () q}$$ \mod{q}$において$ p$が平方剰余か否かを問題にしています。これまで、一次方程式を考えてきましたが、$ \mod{p}$の世界と$ \mod{q}$の世界はなんらの関係もなく独立していました。しかし、2次方程式を考えると何らかの関係があることが分かります。そして、その関係を表しているのが平方剰余の相互法則です。定理2.5.6の式は両辺ともに$ p,q$で対象であり単純で極めて美しい法則であるといえます。

このように極めて美しい形をしているだけではありません。平方剰余の相互法則と、第一補充法則第二補充法則を用いることにより,あらゆる場合の平方剰余/非剰余を判定することができます。

平方剰余の相互法則の意味については、初等整数論(入門編)も参照してください。

具体的な事例でみてみましょう。

2.5.7

$\displaystyle {3 \overwithdelims () 17}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (-1)^{\frac{3-1}{2}\frac{17-1}{2}}{17\overwithdelims () 3}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle {2\overwithdelims () 3}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle (-1)^{\frac{3^2-1}{8}}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle -1$  

実際、$ \mod{17}$の原始根の1つは6であり、2.4.28より、 $ 6^{15}\equiv 3 \pmod{17}$であり、原始根の奇数乗となっているため、平方非剰余であることが分かります。

2.5.8

$\displaystyle {5 \overwithdelims () 17}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle (-1)^{\frac{5-1}{2}\frac{17-1}{2}}{17\overwithdelims () 5}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle {2\overwithdelims () 5}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle (-1)^{\frac{5^2-1}{8}}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle -1$  

実際、2.4.28より、 $ 6^{11}\equiv 5 \pmod{17}$であり、原始根の奇数乗となっているため、平方非剰余であることが分かります。

Takashi
平成24年5月27日