3.1.4 合同類

この講では有限群の具体例をみていきましょう。

自然数$ n$を固定し$ n$を法とする合同類を考えましょう。整数$ a$に対し$ a$を含む合同類 $ \overline{a}$とは$ n$を法として$ a$と合同な整数からなる 集合、つまり、 $ \overline{a}=\{ b\in \mathbb{Z} \vert b\equiv a \pmod n \}$を意味します。すると、合同類に加法が定義されます(合同類の演算参照)。次の定理のように合同類は加法に関し位数$ n$の巡回群になります。

定理 3.1.18
$ n$を自然数とすると、$ n$を法とする合同類は加法に関し位数$ n$の巡回群になる。

証明
(i)群となること、(ii)位数が$ n$であること、(iii)巡回群であることの順に示します。
(i)$ n$を法とする合同類が群になること
$ n$を法とする合同類を $ \overline{a},\overline{b}$とするとその和は $ \overline{a+b}$で定義されますので、加法により閉じています(条件0)。また、$ a+b$は整数の和ですので結合法則が成り立ちます。その結果、合同類の和も結合法則が成り立ちます(条件1)。
0を代表元とする合同類 $ overline{0}$は、任意の合同類 $ \overline{a}$に対し $ \overline{0}+\overline{a}=\overline{a}+\overline{0}=\overline{a}$が成り立ちますので、 $ overline{0}$は単位元です(条件2)。
合同類 $ \overline{a}$に対し、 $ \overline{a}+\overline{(-a)}=\overline{0}$が成り立ちますので、 $ \overline{(-a)}$が逆元となり、任意の元に対し常に逆元が存在します(条件3)。
よって、合同類は群となります。
(ii)位数$ n$であること
整数は、 $ \overline{0},\overline{1},\cdots,\overline{n-1}$のn個の合同類のいずれかに分類され、かつ、これらは異なりますので、合同類の元はn個あることが分かります。
(iii)巡回群であること
$ \overline{1}+\overline{1}=\overline{2}$であり、 $ \overline{1}$$ m$個足すと $ \overline{m}$となり、合同類は $ \overline{1}$により生成されるこが分かる。

定義 3.1.19
自然数$ n$を固定するとき、$ n$を法とする合同類を $ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$と記載する。

Remark 3.1.20
位数$ n$の巡回群は全て $ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$と同型であることが分かりますので、位数$ n$の巡回群は同型を同一の群と考えると一つしかありません。

Takashi
平成24年5月27日